これでスッキリ 〜歯医者の謎にお答えします〜

ICON治療を中心に、気まぐれに歯のお話します

第3話 「なんで、治したのに虫歯になってるの?」

こんにちは。歯科医師のイブスキです。

今日のテーマは、「なんで治したのに、また虫歯になってるの?」です。

 

歯医者不信の理由の1つに挙げられるのが、「治ったと思っていた虫歯が、短期間で再発していた問題」です。これは経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

結論から言いますと、「保険診療は完璧ではないから」です。

これはどういうことでしょうか?

 

まず大前提として、保険診療とは何か?というところから解説します。

保険診療とは厚労省が定めた最低限の治療を指します。

言い方は良くないですが、ホー◯レスの方でも誰でも受けられるもの(と、私の知り合いの先生は言っておりました)、と言えばイメージが湧くでしょうか?

 

また、国の全医療費のうち、お医者さんが92%、歯医者は8%の予算配分となっております。そのため、歯科の保険の料金は、医科と比べて安価です。

 

ところが、歯科医院も当然経営の側面もあり、スタッフや器材などの経費もかかるため、保険診療に関しては全国的に「短時間でそれなりに」を目指す傾向があります。(ポイントが押さえられたらいいのでしょうが、どうしても保険外と比べると、省エネになる傾向はあります)

 

話は戻りますが、保険診療が最低限のものである証拠に、ご存知の方もいるかもしれませんが、被せ物や詰め物(保険だと通常銀歯ですね)の保証期間は2年となっています

これは言い換えると、2年くらいしか持ちませんよ、2年で再治療が必要になるような材料・方法ですよ、ということです。

 

ところが、患者さんにはそういった認識は通常ありませんし、そのように説明されることもほぼありません。

なので、痛い思いや嫌な思いをして、忙しいのに時間を作って歯医者に通って、頑張って治したはずなのに、1~2年後に

 

歯医者「ここの銀歯(プラスチック)のところ、虫歯になってますね」

あなた「えっ!?メンテナンスに来てたのに??(またかよ、ふざけるな!)」

 

ということが起こってしまいます。

 

なので、まずはそもそも、保険の材料には材質的な限界があることを知っていただければ、と思います。(ごめんなさい。私たちも好きでやってる訳ではありません。責めるべき相手は、このシステムを変えてくれない国です)

 

代表例として、先ほどから登場している銀歯が挙げられます。

銀歯はなぜ虫歯になるのでしょうか?

 

製造過程で、金属を熱で溶かし、冷やす過程があるのですが、この時に金属は収縮します。

これにより、完成した銀歯と歯とのフィット(適合)が落ちます。要は隙間ができるイメージです。いろんな文献がありますが、一番精度について細かく書かれた文献だと、0.05mm以上の隙間があれば、虫歯が再発するとされています。参考までに、髪の毛の平均の太さは0.08mmだそうです。髪の毛くらいの隙間があると、ほぼ虫歯になるということですね。

 

あとは、金属の材質です。保険で使用される金属(主成分はパラジウム)は、非常に歯垢が付きやすい材料です。また金属アレルギーになりやすく、先進国では使われなくなってきているのは最近では有名な話です。

 

つまり、①隙間ができやすい+②汚れが付きやすい=虫歯になりやすいのです。

実際に、銀歯の中に虫歯ができていたケースをお見せします。

 

まず1人目。歯磨きがお上手で、メンテナンスにも3か月おきくらいにはいらっしゃる方です。一見悪そうに見えなくないですか?どこに虫歯があるのって感じですよね。

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ところが、歯と歯の間(隣接面)にフロスが引っかかるということや、レントゲンの情報を元に、虫歯があると診断し、同意の下銀歯を外した写真がこちら!

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お、おう(苦笑)患者さんにこの写真をお見せした時に、とても驚いていたことを今でも覚えています、、

ここから、前回ご紹介した、「虫歯の染め出し液」を使いながら虫歯を除去していったのですが、結局ここまで削って虫歯がなくなりました。

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写真に写っている青色のシートは、ラバーダムという超重要アイテムなのですが、今回のテーマとは逸れるので、また後日説明します。

虫歯、結構深かったと思いませんか?厄介なのは、大人の虫歯って痛みがなくゆっくり進行することが多いところです。何年もお口に入っている銀歯は、概してこんな状態が多いです。

 

今の方が、たまたまそうだったんじゃないか、と思われないため、念のためもう一人。

次の方も、歯磨きは比較的お上手な方ですが、まずは銀歯の写真がこちら。

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この間の投稿でお出しした方ですね。銀歯と歯の間に隙間がありますよね。これを先ほどと同様に外していきました。それがこちら。

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はい、案の定虫歯が進行しています(汗)そして、虫歯をほぼ取り切ったあとがこちら。

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この方は噛み合わせの問題も含んでおり、詰め物を入れた後に割れることが予想された部分は、ご了承頂いたうえで、少し余分に歯を削らせていただいています。

 

どうでしょう?イメージできたでしょうか。

 

結論として、声を大にしてお伝えしたいのは、

保険診療を過信してはいけない」ということです。(たくさん敵を作りそうな発言ですが、信念があるので、勇気を出してお伝えしました)

 

じゃあどうすればいいのでしょうか?

 

続きます(^^)