こんにちは、歯科医師のイブスキです。
だいぶ更新が途絶えましたが、新型コロナウイルスが猛威を振るい始め、世論もかなり身近な問題として認識し始めた印象があります。
今日の感染者数はこのような感じです。(NewsDigestより)
また、こんなデータも。
東京都の感染者数は、4/5(日)時点で143人ということで、NYと比較して緩やかではありますが、グラフにするとオーバーシュートは目の前、といった印象を受けます。
メディアの報道だけでなく、友人・知人にお医者さんや看護師さんも多数いるため、私個人は現場での緊迫した情報もいくつか聞いております。
しかし、一般の方の中にはまだ身近な問題として認識していない方も多数いらっしゃるのも事実です。医療職でなければその深刻さが分からなくても仕方ないのかもしれません。
Twitterでも内科の先生からこんな声が。
これだけ連日メディアが深刻さを訴えていて、それでも不要不急の外出をする人が多い印象です、、
マスク付けていたら大丈夫かというと、そういうわけではありません。
感染症の最前線の現場はこれです。(韓国ですが)
「緊急事態宣言出てないから、まだ大丈夫~♪」とか思っていたら、かなり危険だと思います。
医療施設も機能しなくなるのも恐らく時間の問題。
現在の法律では活動の強い制限をすることはできませんが、医療の現場ではロックダウンのような強い強制力が必要だ、という論調が出ております。
経済的な損失を恐れ、国は決断を躊躇している印象ですが、アクションが遅くなるほど問題の長期化や経済的損失に繋がるのではないか、というのが私個人の考えです。
コロナ問題について歯科医師の立場から提言をしたいと思います。
極力客観的で信憑性のある情報を提供できるように心がけます。
歯医者に行っていいの?
結論から言うと、急を要さないならば、受診は控えたほうが無難です。
私の母校である東京医科歯科大学も、外来は原則として急患対応のみとなったようです。
では急を要するもの、要さないものとは具体的にどういうものでしょうか?
急を要するもの
基本的に、耐えられないほどの猛烈な痛み、出血、自力ではどうしようもないものです。
・外傷(歯をぶつけて折れたなど)
・歯の破折
・強い炎症(歯や歯茎の中が猛烈に痛い)
・顎が外れた
急を要さないもの
・クリーニング
・痛みを伴わない炎症、虫歯など
また、歯科医院も今は自粛の対象ではないですが、感染拡大によってはいつ閉鎖するかわかりません。現在通院中の方向けにこんなご提案もします。
積極的に治療しないほうがいいもの
*今現在安定しているものは、基本的に触らないのが吉です。
かかりつけの歯科も、いつ院長の考えもしくは国からのお達しにより、病院を閉めるか分かりません。
また、歯科医師も家庭があり保育園に通う子供もいたりします。保育園が休園となれば、当然歯科医療に携わることができなくなるため、子供のために欠勤ということも起こりえます。感染拡大の状況や収束までの期間に左右されるでしょうから、こればかりは何とも言えません。
かかりつけがしばらく閉院となって困らないよう、以下は急いでやらないことをお勧めします。
①現在痛みのない歯の根を掘り起こす治療
→歯の内部を触ることで、かえって痛みが強く出る場合があります
②仮歯にする治療(特に既に神経の治療をしてある歯で、土台を外すもの)


→現状より不安定になるため、取れやすくなります
③外科処置(親知らずを抜く、インプラント関連、歯周病の外科治療など)
→痛みが出るリスクが極めて高いこと、出血が止まらない状況、傷が開いたり、口腔内細菌が感染した場合のリカバーが大変な場合があるため、急がないほうが望ましいと考えます
外出自粛期間に増加が想定される、歯科的な問題
①咬合性外傷(噛む力による、歯の痛み)
理由)
いつまで仕事に影響を与えるか分からない先行き不安感、収入が減る不安、外出できないストレスなど、多大な精神的な影響が予想されます。
ストレスや睡眠不足は、歯ぎしり・食いしばりを引き起こす原因となりえます。
それも、頻繁に生じる可能性があります。
強い力で噛みこむ歯には、痛みが生じる可能性があります。
現在マウスピースを持っていて使っていない方は、これを機に再開していただくことをお勧めします。
マウスピースについては、第5話に詳しく書かせていただいております
対策)
・マウスピース装着(既に持っていれば)
・睡眠確保(これは大丈夫か?)
・可能な限りストレス発散(難しいかも?)
*普段患者さんを診る限りでは、心配性の方に多い印象です
・浴槽などで体を温める(副交感神経を優位にする)
・日中歯と歯が触れていたら、触れないようにする
・硬いものを同じところで噛まない、頻繁に噛まない
②虫歯・歯周病の進行
原因)
家にいる時間が増え、ストレスで間食の頻度が上がる可能性あり。
歯に歯垢が付いている時間も長くなるため。
外出自粛期間が現時点では1か月程度なので、成人はあまり問題にならなそうですが、子供の虫歯は一気に進行する可能性があるので油断はなさらず!
対策)
間食と間食の間の時間を上げる、子供にお菓子やジュースを与えすぎない、など
不急であれば、歯医者の受診を控えたほうがいい理由
結論から言うと、歯科医院がクラスターになりやすい環境だからです。
クラスターとは、小規模な患者の集団を指します。
コロナウイルスの感染経路は厚労省のHPによると、基本的に①飛沫感染もしくは②接触感染と言われております。
*空気感染のリスクは低いものの、閉鎖空間ですと、咳やくしゃみがなくても感染リスクはあるようです。
NewYorkTimes “The Workers Who Face the Greatest Coronavirus Risk”のデータですと、「ウイルスや感染との接触の頻度」と「職務中の相手との距離感の近さ」から、歯科医師が最も感染リスクが高いことが示されております。
つまり、適切な感染対策を講じていなけれれば、歯科医療従事者は一発アウトと考えます。(=私たちが感染する側になりやすい話です)
また、ネットで見られた方も少なくないかと思いますが、エアロゾル、つまり空気中に浮遊する微小な粒子が発生する環境でもあります。
日本医事新報社に掲載された、富山大学医学部名誉教授の白木先生らの報告によると、飛沫感染は2m離れれば飛沫からエアロゾルへと変化し、乾燥により感染力を失うとしております。
しかし、一方でコロナを含んだエアロゾルは、空気中に3時間は残るというデータもあるようです。
外であれば、2m離れていれば問題がない話となりますが、歯科はとても近い距離で治療を行います。私たちはマスクを装着していることが殆どなので、私たちから患者さんへ移す可能性は低いと思いますが、
患者さんが陽性だった場合、治療によって生じたエアロゾルにより、歯科医療従事者の感染リスクが高いと考えます。
(感染は、目、鼻、のどなどの粘膜への付着により生じます)
また、グローブ越しに口腔内(粘膜)に触れるため、グローブ越しに触れた部分の消毒が不十分であれば、グローブが適切に好感されていたとしても次の患者さんへの感染リスクが生じます。
*普段から然るべき滅菌や消毒を徹底している医院であれば、コロナであってもいつも通りやればいいこととなります。
以上より、しっかり清潔に管理されているクリニックであれば病院で感染するリスクは低いと思われますが、そもそも歯科医院スタッフがクラスターとなりやすいため、医療従事者がマスクやグローブの扱いを適切にやってそうに思えなければ、不急の受診は控えたほうが無難かと思われます。
感染拡大防止のため、特に歯科医院の受診を控えていただいたほうがいい方々
以下の方は、特に受診を控えていただいたほうがいいです。
(感染を広げる可能性がある方)*感染拡大防止のため
①37度以上の発熱や咳症状、倦怠感のある方
②14日以内に嗅覚・味覚障害があった方
③同居人、勤務先に①に該当する方、もしくはコロナウイルス陽性患者がいる方
④過去14日以内に海外渡航歴がある、もしくは帰国された方と接触のあった方
⑤過去14日以内に50人以上が集まるイベントに参加した方
(感染したら危険な方)*厚労省HPより
①高齢者
②基礎疾患を有する方(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など))
③透析を受けている方
④免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方
コロナの対策について(東京医師会からの情報)
殆どの場合、手からの接触感染です。手をしっかり洗うこと、清潔でない手で粘膜に触れるのを避けましょう。
東京都健康安全研究センターより
最後に
これから日本は、これまでに経験したことのない大変な経済的・医療的な局面を迎える可能性があります。
いずれにせよ、損失は生じます。であれば、長期的に考え、まずはコロナウイルスの感染拡大を阻止することが何より重要ではないでしょうか?
マスクがないのも問題かもしれませんが、1人1人が手洗いの徹底、不要不急の外出自粛など、今できることを意識するだけでも状況は変わってくると思います。
自営業の方など、打撃を受けている業界はたくさんあると思います。長期化するほどその辛さは増します。それは私たち歯科医療機関も例外ではありません。
最近目にした情報を元にまとめましたが、少しでも事の深刻さが多くの方に伝わり、早い収束につながることを願うばかりです。
取り急ぎまとめましたが、有益そうな情報があれば、追加更新します。