これでスッキリ 〜歯医者の謎にお答えします〜

ICON治療を中心に、気まぐれに歯のお話します

第12話 前歯に白い部分があるんだけど、治したい。でも、削りたくないなぁ、、

歯科医師のイブスキです。

 

不定期更新ではありますが、最近は勉強したいことが多すぎて、毎回更新期間が空いてしまいます、、

 

楽しみにしてくださっている方がいたら、すいませんでした。その代わり、有益な情報を提供できるように頑張ります(笑)

 

さて、連日のコロナの話題もだいぶ落ち着いてきましたね。

メディアはなぜか歯科医院を叩くのが好きで、マイナスイメージばかり報道されがちですが、

 

実際の医療現場では、昨今の情勢を受けて感染対策の向上が図られている印象です。

 

私もいずれ開業する時には、最高の感染対策で装備しようと考えておりますので、その頃にもし私の力が必要であれば、ぜひご来院ください。何年後になることやらですが^^;

 

さてさて。本題ですが、今日は前歯の白濁についてです。

 

前歯に白濁がある方ってたまにいませんか?(以下、白濁をホワイトスポットと表現します

どういう状態のことを言ってるかイメージの湧かない方のために、写真を2枚添付します。

それでは、前歯に注目です

 

これくらいの方もいれば

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これくらい白い方もいらっしゃるかもしれません。

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もしかしたら、今このブログを読んでくださっている

あなた自身もそうでしょうか?

 

過去に歯医者で「この白いの治せますか?」と聞いたことがある方がいらっしゃるとすれば

 

たいてい「削ってプラスチック(レジン)で埋めたら治せますよ」

 

と言われてきたことでしょう。

 

普通はそうなんです。それがこれまでの歯科医学の限界点でありました。

 

しかし、朗報があります。

 

今は海外(ドイツ)の製品を使うことで、

ほぼ削らずに、ホワイトスポットを改善することができるようになってきました。

 

その製品は、Icon(アイコン)といいます。今日はIconを使ってホワイトスポットを改善したケースについてご紹介します。

 

今日のお話の概要

そもそもホワイトスポットとは

先ほど載せた写真の前歯のように、歯の表面に現れた白濁部分を指します。

ホワイトスポットには種類があり、種類によって治療の方法が異なります

ホワイトスポットの種類

簡単に言えば、「①虫歯が原因のものか ②そうじゃないか」というのが非常に重要になります。

見分け方については、見た目の情報である程度推測が付きますが、あとはその白濁が現れた時期や経緯、位置などをもとに最終的な診断を行います。

 

①虫歯が原因のホワイトスポット

 

虫歯が原因のものは、傾向として

1)歯頚部(歯と歯茎の境目)

2)隣接面(歯と歯の間、特に歯と歯が接しているところ付近)

3)咬合面(奥歯のカチカチ噛んでぶつかる部分)

に発生します。今回は前歯のホワイトスポットについてのお話なので、1)と2)が該当します。

 

虫歯は生まれつきのものではなく、後天的なものです。

なので、あるときから気になりだしたとすれば、それは虫歯系のホワイトスポットだと認識してください。

 

虫歯が原因のホワイトスポットについてをお話する前に、

虫歯って穴が開いて茶色い(黒い)ものじゃないの?

 

と思う方もいると思うので、簡単に解説。歯学部生も必見よ。(笑)

 

虫歯とは(定義)

歯の表面が虫歯の菌による酸に晒され、内部のミネラルが抜けた状態もしくはそれ以上に進行した状態を指します。初期の段階は穴が開いておらず、初期う蝕(しょきうしょく)と呼びます。そこから進行してくると、一般的な皆さんのイメージの虫歯になります。

 

最近(でもないけど)では、ICDAS(アイシーダス)という7段階の虫歯の分類もあります。

この分類の中で、今回の話と関与するのは ICDASのコード1と2になります。

(コード0は虫歯ではない健全なもの。ICDASは虫歯の分類なので、虫歯が原因でないホワイトスポットはコード0となるので注意)

ICDAS Learning JapanのHPに分かりやすい写真があったので、拝借します。

 

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コード1と2の違いは、風を当てて白くなるかどうか、です。

これらも厳密にはれっきとした虫歯(初期う蝕)となります。

 

ちなみに私の学位論文からの抜粋ですが、虫歯が原因のホワイトスポットはこんなイメージです。

(小臼歯の隣接面の初期う蝕・ホワイトスポット)

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2aと2bは同じ歯です。赤の点線部分で歯を切断し、切片を作ったのが2e(実像)です。

要は、内部を横から見れるようにした状態です。中はこんな感じになっています。

2cはOCTと呼ばれる機器での観察像、2dはCLSMと呼ばれる機器での観察像です。

2dの黒っぽいところは、内部の密度がスカスカであることを示しています。

 

②虫歯以外が原因のホワイトスポット

 

虫歯以外のものの代表として、1)エナメル質形成不全2)歯牙フッ素症があります。2)は国内だと水道水に大量のフッ素が入っているわけでもなく、頻繁に高濃度フッ素を塗布されることも考えにくいので、日本国内ではほぼいないと考えられます。

 

なので実質的に、虫歯以外のホワイトスポットは、

 

大半がエナメル質形成不全であると言えると思います。

 

こちらは虫歯とは違い、先天的なものです。

なので、歯が生えてきたころから白かったような気がする方は、こちらに該当します。

 

では、エナメル質形成不全とはなんでしょうか

 

簡単に言うと、

「歯が形成される時期に起こった何らかの出来事(抗生剤の服用、高熱、乳歯の時に歯をぶつけたなどと言われていますが、他にも原因はあるようです)により、適切な成熟を遂げることができず、萌出してきた状態」

と言えるかと思います。うん、難しいですね(笑)

 

もっと簡単に言うと、

「中の構造がスカスカで脆くなったり、色が変色した状態で生えてきている歯」です。

 

エナメル質形成不全とよばれるものの中に、ホワイトスポットを含むものがある、というイメージです。

 

ちなみにエナメル質形成不全のイメージはこんな感じです。

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先ほどと見方は同じです。3aと3bは同じ歯です。赤の点線で作った切片(実像)が3eです。3cはOCT像、3dはCLSM像です。

 

大事な前提なので文章も長くなっておりますが、みなさまここまで着いてこれていますか??笑

 

ホワイトスポットの治療法

 

前歯にホワイトスポットができると気になりますよね。

思いのほか長年深刻に悩んでいる方が多く、治療後に喜んでいただく様子を見て、その悩みの深さに気付かされることがあります。

 

これまでは、いえ、むしろ今でも。

一般的には

 

・経過観察

or

・見た目的に気になる場合に限って削って埋める

 

というのが歯科界の常識となっております。

 

しかし、経過観察を続けてもよくて現状維持。

削って埋めると、長期的にプラスチックが変色してくる。

 

一方、患者さんはそもそも削りたくはない。でもなんとかしたい(苦笑)

 

長年、患者さんの思いと歯科医学の限界の狭間で繰り広げられてきた論争でした。

 

なんとかしたい歯科医師。しかし、タービンを握る選択肢を取り上げられた私たちは、あまりに非力だったのです、、、

 

そこに現れたのが、救世主、Iconです。

 

これは元々初期う蝕の進行抑制目的で作られた製品でしたが、たまたま副次的にホワイトスポットが消える結果も出た、という製品です。

 

…と、先日業界内のWebセミナー(WHITE CROSS)で、大学院の同期の品川淳一先生(上野で開業)が言っておりました。

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 ありがたいことに、私の文献を元に講義をしていただきました。(Ibusuki 2015)

Iconとは

ドイツのDMG社製の、低粘度のレジンの製品です。

Iconの原理

先ほどの品川先生の写真左の歯の画像をご覧ください。

これは、抜歯となった歯を用いて私が作製したホワイトスポット(虫歯由来)の薄い切片なのですが、ホワイトスポットの部分と周囲の色って違いますよね。

 

ホワイトスポットは、周りのエナメル質と比べ、ミネラルが抜けてスカスカになっている状態なのですが、

 

スカスカになったことで、周辺と光の屈折率(反射の仕方)が変わってしまい、目の錯覚を起こしているのが白く見える原因なのです。

 

Iconは、健康なエナメル質と同じくらいの屈折率のレジンを浸透させることで、周辺のエナメル質と屈折率を近い状態に戻し、目の錯覚をなくすイメージの治療です。

 Iconがうまくいく人

ただし、Iconはすべてのホワイトスポットにうまくいくわけではありません。

 

基本的には虫歯由来のもので、歯の表面に穴が開いていないもの(ICDASのコード1,2)が対象です。

 

また、矯正が終わって、器具を外した後にホワイトスポットが現れた場合も適応です。

 

ちょっと脱線 ~ここだけの話~

虫歯系のホワイトスポットは、初期のものであれば以下の製品で治ることもあります。

ただし、結果が出るまで数か月はかかると思います。

 

POs-Ca+F (ポスカエフ)

ジャガイモのでんぷん由来のリン酸化オリゴ糖という成分とFを配合したガムで、

実は医科歯科の同じ研究室の先輩が、グリコと共同開発したガムです。

再石灰化(=歯から抜け落ちたミネラルを取り戻すこと)の研究者で知らない人はいないくらい有名な商品なのですが、今国内に2つある再石灰化系の製品の双璧です。

 

 

MIペースト

CPP-ACPと呼ばれる、牛乳に含まれる成分を用いた歯磨き粉。これはフッ素は配合されていませんが、牛乳アレルギーの方は使うことができません。

GC(ジーシー) MIペーストミント40g 1本

GC(ジーシー) MIペーストミント40g 1本

  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 

 

ちなみに、CPP-ACPはリカルデントにも入っています。(効果はMIペーストには劣る)

 

もしガムを噛むなら、POs-Ca+Fかリカルデントにしておいてください(笑)

 

エナメル質形成不全はどうなの?治るの?

残念ながら、エナメル質形成不全はIconではあまりうまくいかないとされています。

えーこれだけ長々と引っ張っておいて、私、形成不全っぽいのに結局治らないんじゃん、、この時間返せよ、と思ったあなた。

 

 

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まだ、諦めないでください

 

私が大学院で4年かけて研究してきた知識を応用したら、エナメル質形成不全でも一定の成果が現れてきました。

 

5年前に、当時医局で最も厳しかった北迫勇一先生(現・外務省歯科室勤務)に熱血指導を賜りましたが、そのおかげでこの方法論に行きつくことができたので、感謝しかありません。

この場をお借りして、深く感謝申し上げます。

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結論ですが、エナメル質形成不全でも少なからず改善はできます。

それもほぼ削らずにです。

 

では実際の変化をご供覧ください。

 実際の症例

上の中切歯(真ん中の2本の歯)のホワイトスポットを改善したいという患者さんでした。小学生の頃から長年悩んできた(時期)、ホワイトスポットの発生している歯牙の左右対称性、発生位置などから、エナメル質形成不全と診断しました

通常のIconの使用手順では治らないとされるケースです。

 

術前

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細かい工程は省きますが、このようにラバーダムと呼ばれるゴムのシートを装着し、汚染が起こりづらく、薬剤が浸透しやすい環境の下実施します。

これはほぼ終盤ですね。

 

術中(終盤付近)

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術後

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術前・術後の比較

どうでしょうか?手前味噌ですが、結構目立たなくなったと思っています(笑)

従来法の削ってレジンで埋める手法は取っておりません。

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あとはこれくらい変化した方も。

 

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繰り返しますが、諦めないでくださいね!

 

最後に

Iconは、国内の歯科医師の中でもまだまだ認知度は低く、実際に導入されているクリニックは少ないのが現状です。

 

その中で、説明書通りの使用法ではエナメル質形成不全によるホワイトスポットは治すことができない(改善したとすれば、虫歯と形成不全の併発パターンで、虫歯によるホワイトスポットが消えた可能性が高い)ため、

 

実質削らずに治せるクリニックやドクターは、まだそれほど多くはいないと推察しております。

 

私は過去に勉強してきた文献の情報を基に、形成不全の治療のノウハウが確立されつつあります。

 

もし、長年前歯のホワイトスポットでお悩みの方がいらっしゃれば、解決できる可能性があるので、ぜひご一報ください(*^^*)

 

*勤務先である、Tooth Create Tokyo(東京駅から徒歩15分くらい)にてIcon治療を行っております。歯の本数にもよりますが、大体1時間くらいいただければ改善できます。

 

長くなりましたが、今回はこのへんで(*^^*)