こんにちは。歯科医師のイブスキです。
太平洋側の皆様、台風対策は万全ですか?
今日は休みだったので、防災グッズを見に行っておりましたが、大型家電量販店やスーパーなどで、防災アイテムはほぼ売り切れ状態になっておりました。
複数の店舗を廻った傾向として、
・水
・パン
・カセットコンロとガス
・手回し充電タイプのラジオ
・養生テープ
あたりはほぼ見かけませんでしたね。仕事の関係で準備が難しかったのですが、1日前だと遅すぎたようです。
改めて、早めの対策の大切さを実感しております^^;
*これらのものは、災害時に品薄になりやすいことが今回分かりました。直前に慌てても間に合わないので、次は地震に備えて用意しておきましょう。
イワタニ カセットガス 専用ボックス入り 12本組 CB-250-OR-12BOX
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実は私、奄美大島出身で、幼少期から台風をかなり経験しているのですが、台風って本当に危険です。(ちなみに今の実家は徳之島というところです)
念のため奄美と徳之島の画像です。(沖縄に近いですが、鹿児島県です)
毎年いくつも台風が来るので、沖縄・奄美方面の人は慣れてますが、島での平均的な被害としては
・停電
・雨漏り(その家の築年数や造りによりますが)
・飛んできたもので窓ガラスが割れる
・倒木
・土砂崩れ
あたりかと思います。さらに大型のものだと
・家の屋根が飛ぶ
・5トントラック横転
などを見たことがあります。そう、屋根って飛んでいくんですよ、台風で。人生で一度でも家の屋根がなくなってるのを見たことありますか?
幼稚園の時に、朝起きたら隣の新婚さんのお家の屋根がなくなっていて、震えたことを今でも鮮明に覚えております。
*写真はイメージです
また、最近だと、去年の夏に徳之島へ直撃しているのですが、自宅で避難していた家族から、初めて台風で死ぬかと思ったと電話で言われました。今年帰省した際に、まだ倒壊したままの家屋もあったりして、改めて台風をナメてはいけないな、と実感した次第です。
関東にいると、島のように飛んできそうなものは少ないですし、家の造りもしっかりはしていますが、インフラやライフラインにダメージがあった場合、影響は計り知れないですよね。
*写真はイメージです
土曜はどれくらい荒れるか分かりませんが、本当に風速65メートル規模のものが来るのであれば、外出は命取りだと思います。
被害が最小限になることを祈るばかりです。
さて、どちらが本題か分からなくなりましたが(笑)、今日は、「台風が近づくと歯が痛くなるのはなぜか」についてお話していきたいと思います。
今日の概要
台風が近づくと歯が痛くなる理由
今回は台風が接近しているので、ピンポイントで「台風で」とお書きしましたが、状況としては、天気が悪い時ですね。
要は、圧(気圧)の変化が起こるとき、歯に痛みが出る人がいます。
気圧の変化の代表格は天気ですが、他にも飛行機に乗って移動するとき、水中にもぐっているとき(水圧の変化)など、いろんな状況で歯が痛くなることがあります。
ただし、痛くなるのは歯に問題を抱えている場合がほとんどで、あとは歯茎に問題を抱えている場合、例外的に鼻に問題を抱えているときも痛み(この場合はどちらかというと違和感のほうが多いです)が現れることがあります。
では、①歯に問題を抱えているときと、②歯茎に問題を抱えているとき、③鼻に問題を抱えているとき、それぞれどんなことが起こっているのでしょうか?
歯に問題がある場合
多く場合、根尖病変といって、歯の根っこの先に膿の袋ができています。このとき、ほとんどの場合、歯の神経は死んでいます。
黄色の矢印のところの内部に膿の袋があるため、歯茎が少し膨れています
レントゲンを撮ると
分かりにくいのでマークすると
黄色で囲ったあたりに膿ができています。膿の場所は、骨も溶けている状態です。
問題は、外気圧の変化で膿が圧迫されるのに、被せ物が入っていて膿の出口がないため、歯の根の先で相当な圧が生じます。
黄色の矢印は膿の動き。しかし、出口がない。
これにより歯の内部の違和感、人によっては激痛、といった症状が現れます。
急性症状が出ているときは、麻酔も効かないですし、積極的な治療をしても炎症が強くなることが多いので、基本的には抗生剤を服用して炎症が治まるのを待ちます。
*ドクターによっては、歯の神経のスペースまで穴を開け、積極的に膿を排出させることもあります。それも1つの正解だと思います。ただ、その方法は、数日間歯の内部に口腔内の汚れや細菌が入ってしまうため、私は極力避けたいやり方だと考えております。
炎症が治まれば、歯の神経のスペースに穴を開けて、膿を出したり、歯の内部の感染物質を除去する治療(根管治療:こんかんちりょう)を行っていきます。
歯茎に問題がある場合
これはいわゆる歯周病ですが、初期のものというより、中等度~重度のもので痛みに変わるものが多いように感じます。
歯周病というのは、歯茎の腫れや口臭のイメージが強いかもしれませんが、本質的には歯を支える骨が溶けていく病気です。基本的に、症状なくじわじわ進行し、免疫力が低下した時に痛みに変わることがあります。
たとえば、この方
前歯とか、いろんなところに目が行くと思いますが、実は右下と左下の奥歯で、歯周病がかなり進行しております。
レントゲンですと
こんな感じ。上の方も歯周病が進んでいますが、下の黄色の矢印が顕著で分かりやすいと思います。こういった部分も、免疫力低下とともに、急な痛みに変わるリスクがあります。
また、炎症の度に骨が溶けていくため、然るべき対応を講じなければ、いずれグラグラして抜けてしまいます。
気圧の変化で痛くなるイメージはあまりないのですが、膿が歯茎から出づらい状況になると、先ほどの根の先の膿同様に、痛みに変わることはあります。
鼻に問題がある場合
鼻に問題がある場合とは、結論を言うと、副鼻腔炎(ふくびくうえん;いわゆる蓄膿症)のことです。
副鼻腔炎になると、上顎洞(じょうがくどう)という頬っぺたの内部の空洞に炎症が起こります(蓄膿症は膿が溜まった状態)。
ちなみに、副鼻腔=上顎洞・前頭洞・蝶形骨洞・篩骨洞の4つの空洞から構成されます。
副鼻腔のうち、歯に影響を与えるのは上顎洞炎ですが、前頭洞などで炎症が起これば頭痛の原因となります。炎症が進んでいると、副鼻腔の複数で同時に炎症を起こすこともあります。
これにより、目の奥から頭にかけてが不快な重い感じになったり、頭痛になることがあります。
特に上の奥歯の根っこは、解剖学的にこの上顎洞と近いため、副鼻腔炎(上顎洞炎)になると歯自体も違和感を感じることがあります。
具体的には、ジャンプしたり、階段を駆け下りたりしたときに、上顎洞内に入っている歯の根が膿の圧を感知し、振動が歯に響きます。
レントゲンを撮って、歯に問題がなければ、副鼻腔炎が原因なので、この場合は耳鼻科へ受診し、鼻の中を吸引したり、抗生剤を出してもらう流れとなります。
その他
疲労やストレスで免疫力の低下も起こりますが、同時に睡眠時の歯ぎしり・食いしばりも増えている可能性があります。
その場合、歯の内部に問題を抱えていなったとしても、食いしばりによる痛みが現れている可能性があります。
ただし、これは台風や気圧の変化との直接的な因果関係は薄いと思われるため、あくまで参考まで、とします。
対策
対策と言っても、急に痛くなったらどうしようもないんですが、歯医者に行けるなら早めに受診して、レントゲンでチェックし、必要あれば抗生剤を処方してもらうのが必要となります。痛み止めだけだと、炎症が強すぎる場合、ボルタレンでも効かないこともあります。そういう意味では、違和感がある時点で受診するのが無難です。
あとは、大体身体の免疫力が落ちているときに急な痛みは現れます。傾向としては、
①睡眠不足
②ストレス
③疲労
④季節の変わり目(気温の変化)
この辺りが、きっかけになっていることがほとんどのように感じます。
なので、可能な限り、思い当たる原因を解決する(たとえば寝不足なら、極力寝る時間を確保する、など)ことが大切になります。
歯ぎしり・食いしばりによる痛みに対しては、マウスピース装着が最も効果的なのですが、急患でいらっしゃってすぐにお渡しすることができません、、(歯型を採って、製作する時間が必要であるため)なので、その日は早めに寝るとか、痛み止めで我慢するしかなさそうです。
まとめ
台風のときに歯が痛くなるのは、大きく分けて3つのことが原因となります。
①歯の中に膿を抱えている場合(多い)
②歯茎に膿を抱えている場合(①より少ない)
③頬っぺたの中に膿を抱えている場合(副鼻腔)
歯や歯茎が原因であれば、大体歯医者で抗生剤処方、
鼻が原因であれば、耳鼻科で抗生剤処方+α
という対応になることが多いです。要は歯医者だけで済むか、耳鼻科も必要かの違いですね。
いずれにしても、疲れやストレスを抱え過ぎず、よく睡眠を摂ることが大事です。違和感や異変を感じたら、早めに受診することで、痛みを最小限で食い止められるかと思います。
早めの受診に関しては、症状がなくとも定期的に歯科医院へ受診し、レントゲンで変化がないかの確認をすることで早期発見や、問題の最小化が可能です。
明日は台風で休診の病院も多そうですが、もし今痛みがある方は、早めの受診をお勧めします。
以上、気圧の変化とその原因についてでした(*^^*)